"孝ならんと欲すれば忠ならず、忠ならんと欲すれば孝ならず"
まさに、平重盛の心境だなあ、毎度のことだけど。
さいわいこのケースは、筋力も残っています。
食欲もあるというし、自然回復の可能性は強い。
「じゃ、1人で起きあがれるようになるまでは、ギャッチベッドを使いましょうか。これなら楽でしょう」と私は妥協する。
娘さんにクランクを回してもらい、ギャッチベッドを起こしてみる。
「これならできます」と娘さん。
しかし、今度は本人が不満そうです。
苦しそうにゴソゴソしています。
そして、「背中が、背中が......」と訴えるのです。
角度をいろいろと変えてみるが、やはり背中が圧迫されて苦しいと言う。
さて困った。
私は、家族にはかなりの要求をするのだが、80歳の老人の拒否には弱い。
人間関係をひたすら大事にする老人の世代が、このようにはっきりと拒否するのは、相当のことだからだ。