翌日、ベッドを搬入する。
私は老人ホームからの帰りに立ち寄って、家族と本人にベッドの使い方を説明する。
ただ安静のために寝ているだけのベッドなら、説明は不要です。
だが私たちは、寝たきりからの脱出の道具としてベッドを使おうとしているのです。
そこで、ていねいな説明は不可欠となる。
「頭の向きをこちらにしたのは、偶然じゃありません。
お婆さんの場合、右向きになって起きるほうが簡単だからです。
"北枕"じゃないですよね」
じつは、これでよくもめるのだ。
機能的にはいい頭の向きが"北枕"だというので、家族に反対されるのです。
誰か、"北枕"でも縁起が悪くならないというおまじないか何か、ご存知ないでしょうか。
「ちょっと右横を向いて。そうそう。
そして足をベッドから出してみて。
こうすると足が重りになって起きやすいんです。
それから、右手をこの辺りに置いて、肘をついて、こうして起きます」と、私は介助してみせる。